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3行でわかる膝蓋骨脱臼
  • 膝のお皿(膝蓋骨)が外側に外れるけがで、膝を伸ばすと元に戻ることが多いが、10〜20代のスポーツ選手に多く初回脱臼後の15〜44%で再脱臼が起きる
  • 脱臼により内側の靭帯(MPFL:Medial PatelloFemoral Ligament)がきれるため、放置すると脱臼を繰り返し膝蓋骨と大腿骨の軟骨が損傷する
  • 再発を繰り返す場合は手術(MPFL再建術)が有効で、約90%がスポーツ復帰できる
詳しくは下記をご覧ください

① 膝蓋骨脱臼とは

膝蓋骨(ひざのお皿)は通常、大腿骨(太ももの骨)の溝(滑車溝)の中を、膝の曲げ伸ばしに従って上下に動いています。膝蓋骨脱臼は、この膝蓋骨が溝から外れて外側に抜けてしまう状態です。

ジャンプの着地・急な方向転換・膝をひねる動作などで生じることが多く、スポーツ中の受傷が約40%を占めます。[1] 10〜20代の若年層に多く、15〜19歳の発生率は10万人あたり約11人と高くなっています。[2] 福井県の人口をもとに計算すると、福井県で年間17人・福井市で6人程度が受傷している計算になります。[3]

基本的に初回脱臼は保存療法(装具・リハビリ)を行いますが、15〜44%の方で再脱臼が生じます。2回目の脱臼後はその確率がさらに高くなることが知られているため、2回脱臼した方には手術が勧められます。[4] 脱臼を繰り返す状態を「反復性膝蓋骨脱臼」といいます。また、ある屈曲角度で必ず抜ける「習慣性脱臼」、常に外れたままの「恒常性脱臼」もあります。

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② なりやすい人・解剖学的背景

膝蓋骨脱臼には、外力だけでなく、もともとの骨や靭帯の形状が大きく関わっています。以下のような素因がある方は脱臼リスクが高くなります。

リスク因子 内容
滑車低形成(Trochlear dysplasia) 大腿骨の溝が浅い・平らで、膝蓋骨が外れやすい。最も重要なリスク因子のひとつ
TT-TG距離の増大 脛骨粗面(脛の骨の出っ張り)と大腿骨の溝の距離が離れていると、膝蓋骨が外側に引っ張られやすくなる
高位膝蓋骨(Patella alta) 膝蓋骨の位置が上にあり、溝に収まり始めるのが遅い状態
全身関節弛緩性 もともと関節が柔らかい体質。女性に多い
性別・年齢 女性・10〜20代に多い。女性ホルモンにより靭帯が弛緩しやすい影響が指摘されている
遺伝性疾患 遺伝性疾患の中に膝蓋骨脱臼が起こりやすいものがあることが知られている

初回脱臼では、膝蓋骨を内側から支える靭帯「内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)」がほぼ必ず損傷します。MPFLは膝蓋骨が外側に抜けるのを防ぐ最も重要な靭帯であり、この損傷が再脱臼のしやすさにつながります。

③ 症状・診断

急性期(脱臼直後)の症状

脱臼の瞬間、膝のお皿が外側に抜けると力が入らなくなるのを感じます。多くの場合、膝を伸ばすと自然に元の位置に戻りますが、腫れと強い痛みが残ります。関節内に出血(血腫)がたまり、膝が張った感じになります。

反復性・慢性期の症状

脱臼を繰り返すようになると、急な方向転換やジャンプ着地のたびに「外れそう」という強い不安感が生じます。また抜けるたびに膝蓋骨と大腿骨の軟骨が傷みます。脱臼まで至らなくとも、膝蓋骨が一時的にずれてすぐ戻る「亜脱臼」を繰り返すこともあります。

診断

診察では、膝蓋骨を外側に押したときに患者さんが強い不安感を示すApprehension testが陽性になります。画像検査ではMRIでMPFLの損傷・関節軟骨の損傷・骨挫傷を確認します。X線では膝蓋骨の高さや大腿骨の溝の形状を評価します。また、軟骨損傷の際に骨ごと剥がれると(骨軟骨骨折)、レントゲンに写ることがあります。

脱臼の際に膝蓋骨や大腿骨の軟骨が剥がれる「骨軟骨骨折」を合併することがあります。剥がれた骨軟骨片が関節内を浮遊すると(関節鼠)、膝が引っかかってロックしたり、慢性的な痛みの原因となります。初回脱臼でも、必ずMRIによる精密な評価を受けることをお勧めします。

④ 治療の考え方

初回脱臼の場合

骨軟骨骨折などの合併がなければ、まず保存療法(装具・大腿四頭筋トレーニング・ハムストリング・股関節周囲筋の強化)を選択することが一般的です。ただし、保存療法後の再脱臼率は15〜44%とされており、再発リスクが高い方(若年・スポーツ選手・解剖学的リスク因子が強い)では早期の手術を検討することもあります。[4] また、骨軟骨損傷があれば初回でも手術を行います。

反復性膝蓋骨脱臼の場合

2回以上の脱臼、または不安定感が強くスポーツ・日常生活に支障がある場合は手術を検討します。MPFL再建術を行った群では、保存療法群と比べて再脱臼率が有意に低く(再建術群7%対保存療法群30%)、機能も優れることが報告されています。[5]

⚠️ 脱臼のたびに関節軟骨が傷つきます。放置・再発を繰り返すと軟骨損傷が蓄積し、将来的な変形性膝関節症につながるリスクがあります。不安定感が続く場合は早めに専門医に相談してください。

解剖学的リスク因子が強い場合・習慣性・恒常性脱臼の場合

TT-TG距離が著しく大きい場合や滑車低形成が強い場合は、MPFL再建術に加えて骨切り術(脛骨粗面内方移動術など)を同時に行うことがあります。習慣性脱臼や恒常性脱臼に対しては、MPFL再建だけでなく他の靭帯の再建や脛骨粗面の移動術を併用することもあります。[6][7] どのような手術が適切かは、X線・MRIの評価と患者さんの年齢・スポーツレベルを総合して判断します。

⑤ 手術について(MPFL再建術)

反復性膝蓋骨脱臼の標準的な手術は「内側膝蓋大腿靭帯再建術(MPFL再建術)」です。自分の腱(主にハムストリング腱)を採取し、MPFLが走行していた位置に新しい靭帯として移植・固定します。近年では再建靭帯として人工靭帯を選択することもあります。

手術の流れ

膝蓋骨および大腿骨の正確な解剖学的位置に骨孔(トンネル)を作成し、採取した腱を通して固定します。関節鏡を併用することで、同時に軟骨損傷の有無も確認・処置できます。

人工靭帯について

近年では自家腱を採取せずに人工靭帯を使用した再建も選択されることが増えています。自家腱を採取しないため術後の回復が早い利点がありますが、人工靭帯周囲に炎症を起こすことがあるため、適応をしっかり選ぶことが重要です。[8]

手術成績

MPFL再建術後のスポーツ復帰率は約91%と報告されており、そのうち67%が受傷前と同等以上のレベルに復帰しています。術後の再脱臼率は3%前後と低く、安定した結果が得られる術式です。[9]

当院での手術方針

  • 手術は福井総合病院にて院長が執刀します
  • MPFL再建術を基本とし、TT-TG距離など解剖学的評価をふまえて術式を選択します
  • 術後の外来・リハビリは当院で一貫して対応します

⑥ 術後リハビリテーション

1

術直後〜1か月

装具固定を行いながら段階的に可動域訓練を開始。荷重は術翌日から許可されることが多いですが、術式により異なります。

2

1〜3か月

大腿四頭筋・股関節周囲筋の筋力強化を中心に進めます。装具を徐々に外し、日常生活動作を拡大します。

3

3〜6か月

ジョギング開始。方向転換・ジャンプなど競技に近い動きへ段階的に移行します。

4

6〜10か月 競技復帰

筋力・膝の安定性・動作の確認を経て、試合復帰を目指します。スポーツ復帰の平均期間は術後約10か月と報告されています。

当院では理学療法士と連携し、退院後のリハビリ・外来診察を一貫して行います。

⑦ 当院での対応

当院での対応

  • 院内オープン型AI搭載MRI・超音波検査でMPFL損傷・軟骨損傷を迅速に評価
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクターが診察・治療方針を決定
  • 手術(MPFL再建術)は福井総合病院にて院長が執刀
  • 手術後の回診・リハビリ・外来をシームレスに一貫対応
  • 予約不要・当日受診可
監修 院長 大橋義徳(整形外科専門医・医学博士・日本スポーツ協会公認スポーツドクター)

参考文献

  1. Xu Z, Dong Z, Zhao J, Ao Y. Epidemiology of lateral patellar dislocation including bone bruise incidence: five years of data from a trauma center. Orthop Surg. 2024;16(2):426-434. PubMed
  2. Fithian DC, Paxton EW, Stone ML, et al. Epidemiology and natural history of acute patellar dislocation. Am J Sports Med. 2004;32(5):1114-1121. PubMed
  3. 福井県統計課. 福井県推計人口. 福井県ホームページ. https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/toukei-jouhou/zinnkou/jinkou.html
  4. Atkin DM, Fithian DC, Marangi KS, Stone ML, Dobson BE, Mendelsohn C. Characteristics of patients with primary acute lateral patellar dislocation and their recovery within the first 6 months of injury. Am J Sports Med. 2000;28(4):472-479. PubMed
  5. Weber AE, Nathani A, Dines JS, et al. MPFL reconstruction results in lower redislocation rates and higher functional outcomes than rehabilitation: a systematic review and meta-analysis. J Bone Joint Surg Am. 2022;104(15):1326-1334. PubMed
  6. 中嶋宰大, 中瀬順介, 小坂正裕, 大橋義徳, 土屋弘行(金沢大学 整形外科). 習慣性膝蓋骨脱臼に対し内側膝蓋大腿靱帯再建術と脛骨粗面前内方移行術を併用した1例. 日本臨床スポーツ医学会誌. 2015;23(2):276-279. J-STAGE
  7. 豊岡加朱, 中瀬順介, 下崎研吾, 浅井一希, 土屋弘行(金沢大学 整形外科). 骨端線閉鎖前の恒久性・習慣性膝蓋骨脱臼における新しい術式. JOSKAS. 2020;45(3):780-785. J-STAGE
  8. 石井宏和, 中瀬順介, 金山智之, 石田善浩, 梁取祐介, 有馬佑(金沢大学附属病院 整形外科). 反復性膝蓋骨脱臼術後に人工靱帯周囲炎を発症した2例. 中部日本整形外科災害外科学会雑誌. 2024;67(2):253-254. J-STAGE
  9. Malecki K, Fabis-Strobin A, Fabis J. Medial patellofemoral ligament reconstruction for recurrent patellar dislocation allows a good rate to return to sport. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2022;30(2):495-502. PubMed

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