- ①膝をひねる・しゃがむ動作で起こる外傷性の半月板断裂で、ACL(前十字靭帯)断裂に合併することも多い
- ②「膝が伸びない・引っかかる(ロッキング)」は早めの受診が必要なサインで、放置すると軟骨損傷が進行する
- ③断裂形態・年齢・部位によって縫合術か部分切除術かを判断する。現在は「Save the Meniscus(温存)」が世界標準
① 半月板とは・スポーツ外傷の特徴
半月板は膝の関節内にあるコラーゲン線維の集まりで、内側と外側に1枚ずつ合計2枚あります。荷重の分散・二次的な制動性・関節潤滑という3つの重要な役割を担っています。[1]
半月板の主な役割:
・荷重の分散(膝にかかる力を均等に分ける)
・二次的な制動性(ACLなどと協調して膝の安定に貢献)
・関節潤滑(軟骨を守る)
スポーツによる半月板損傷は、荷重をかけた状態での膝のひねり・急な方向転換・深いしゃがみ動作などで起こります。
ACL(前十字靭帯)断裂に合併する形で半月板が損傷することも多くあります。単独損傷もあればACL断裂に伴うものも多いというのが現場の実感です。
② 治りにくい理由・Save the Meniscus
半月板には辺縁部の約1/3にしか血流がありません。[1] 血流に乏しい中心部は自然治癒が期待できず、断裂が残ったままになることが多いです。
日本における半月板手術の推移(Kawata 2018)[2]:
2007年:切除92.8% / 縫合7.0%
2014年:切除73.3% / 縫合25.9%
2021年:切除50% / 縫合49%
→ 縫合術が急速に増加中
縫合術が増えた背景には2つの要因があります。2011年頃より縫合術のほうが臨床成績がよいというシステマティックレビューが出てくるようになったこと[4]と、Arthroscopy誌の巻頭言で「Save the Meniscus(半月板を守ろう!)」という提言がなされたこと[3]が挙げられます。その結果、技術とデバイスの進化とともに半月板縫合術は盛んに行われるようになってきています。
⚠️ 縫合術は切除術より再手術が多いものの、長期的な臨床成績が良く関節症性変化が少ないことが示されています。[4]
治癒を助けるために、骨から出血させる(Bone Marrow Stimulation)・血の塊(フィブリンクロット)を断裂部に挟み込むといった工夫が行われています。[5] ACL再建術と同時に縫合を行うと治癒率が上がることも知られています。
【最新情報・2026年5月承認】東京科学大学・関矢一郎教授(再生医療研究センター長)が主導した医師主導治験をもとに、富士フイルム富山化学株式会社が開発した「セイビスカス®注」が、国内初の半月板損傷向け再生医療等製品として2026年5月8日に製造販売承認を取得しました。患者自身の膝から採取した滑膜組織を分離・培養した自家滑膜間葉系幹細胞を関節鏡下に投与し、損傷部の修復を促します。臨床第Ⅲ相試験(フラップ断裂患者15例)では、リスホルムスコアが投与後52週で平均53.5点改善し、104週時点でも維持されました。現時点の適応は「半月板切除術が適応となる半月板損傷」(主にフラップ断裂)に限られますが、半月板温存の新たな選択肢として注目されています。
③ 成長期(小中高生)の半月板損傷
小学校高学年〜高校生円板状半月板(アジア人に多い形態異常)
円板状半月板とは
通常、半月板は三日月状ですが、発生の過程で中央部が消えずに円板状のまま残ってしまったものを「円板状半月板」といいます。欧米と比較して東アジアに多く、外側半月板に多く発生します(外側約17%、内側0.006〜3%)。コラーゲン線維の円周状配列が低形成のため、正常半月板に比べて損傷しやすいという特徴があります。
断裂した場合は、部分切除と縫合を組み合わせて正常な半月状の形態に近づける手術(形成縫合・形成切除)を行います。術前の変性が縫合成績に影響するため、できる限り早期に手術を行うことが推奨されています。[6,7,8,9]
不安定性の臨床的分類(Clinical Grading System)
円板状半月板の不安定性は臨床所見によってGrade 1〜3に分類され、治療方針の決定に用いられます。[10]
Grade 1
膝伸展位でのみ不安定性を認める。自覚症状は軽度なことが多い。
Grade 2
膝屈曲位でも不安定性を認める。クリック音や引っかかり感が明確になる。
Grade 3
全可動域にわたって不安定性を認める。強い痛みや著明なクリック音を伴うことが多い。手術適応となることが多い。
⚠️ Grade 3(全可動域での不安定性)は断裂・逸脱のリスクが高く、手術による安定化を検討します。
MRIによる断裂形態分類(AC type / PC type)
MRIを用いた断裂形態の分類として Antero-central(AC)type・Postero-central(PC)type などが知られています。[11,12] AC typeは急性損傷で伸展制限をきたすことが多く、PC typeは弾発症状や前節再断裂が問題になります。レントゲンでも外顆の低形成・顆間隆起間距離の拡大などから円板状半月板を推定できます。[13]
成長期に縫合術を積極的に選ぶ理由
骨端線(成長軟骨)が残っている成長期では、半月板を切除すると将来の変形性膝関節症のリスクが高まります。そのため成人よりも積極的に縫合術による温存を選択します。縫合術は復帰までの期間が長くなりますが、長期的な膝の健康を守るうえで重要な選択です。
成長期に多い断裂形態
縦断裂・バケツ柄断裂
コラーゲン線維に平行な断裂。大きく切れてバケツ柄状になると膝が完全に伸びなくなる(ロッキング)。成長期のスポーツ外傷に多い。
横断裂(放射状断裂)
線維の走行に垂直な断裂。半月板の機能を大きく損なうため、縫合術か部分切除かを慎重に判断する。
④ 成人のスポーツによる半月板損傷
18歳以上・成人アスリートACL断裂との合併に注意
成人のスポーツ外傷では、ACL断裂に外側半月板後根断裂(LMPR断裂)が合併する頻度は7〜15%と報告されています。[14,15] 男性・接触型・内側半月板損傷の合併例に多い傾向があります。[16,14,15]
LMPR部は前外側不安定性に対する二次制動機構として機能しており[17,16]、断裂すると大腿骨脛骨関節面の接触圧が上昇します。[18] 以前は血流が良好で自己治癒能力が高いとして放置されることもありましたが、現在は全例縫合の適応とする考え方が主流です。
ACL断裂に半月板損傷が合併している場合、半月板縫合術を先行させた後にACL再建術を行う、あるいは同時手術を行うなど、状況に応じた戦略が必要です。ACL再建術と同時に縫合を行うことで半月板の治癒率が向上することが知られています。
成人に多い断裂形態と特徴
バケツ柄断裂
縦断裂が大きくなり内側に転位した状態。ロッキングを起こす。早期手術が必要。
縦断裂
辺縁部(血流ある部位)の断裂は縫合術の適応となることが多い。
横断裂(放射状断裂)
荷重分散機能を大きく損なうため、縫合できれば縫合を優先する。
複合断裂
複数の断裂が組み合わさったもの。繰り返しの負荷でも生じる。
縫合術 vs 部分切除術:成績の比較
スポーツ復帰率:縫合術 84.7%(術前レベル復帰78%)/ 切除術 85.1%(術前レベル復帰75.5%)
縫合術は復帰まで時間がかかるが、長期的な関節症性変化が少ない。
切除術は5年で半数、15年で8割に関節症性変化が生じるとされる。[4]
⑤ 手術方法
断裂の形態・部位・年齢・活動性などを考慮して以下の手術方法を選択します。「Save the Meniscus(半月板を守ろう!)」[3] の考え方に基づき、可能な限り半月板を温存することを目指します。
縫合術復帰までの期間は長め
部分切除術復帰が比較的早い
円板状半月板形成術
症状・断裂形態・年齢・活動性・競技のレベルやチーム内の立ち位置なども考慮して、最善の方針を一緒に相談しながら決定します。
⑥ 当院での対応
当院での対応
- 正確に身体所見を取り、院内オープン型AI搭載MRI・超音波検査で迅速に診断
- 日本スポーツ協会公認スポーツドクターが診察
- 手術は福井総合病院にて院長が執刀
- 手術後の回診・リハビリ・外来をシームレスに一貫対応
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参考文献
- Arnoczky SP, Warren RF. Microvasculature of the human meniscus. Am J Sports Med. 1982;10(2):90-95.
- Kawata M, et al. Annual trends in arthroscopic meniscus surgery based on data from a nationwide database: a nationwide epidemiological study. PLoS One. 2018;13(1).
- Lubowitz JH, Poehling GG. Save the Meniscus. Arthroscopy. 2011;27(3):301-302.
- Paxton ES, et al. Meniscal repair versus partial meniscectomy: a systematic review comparing reoperation rates and clinical outcomes. Arthroscopy. 2011;27(9):1275-1288.
- Henning CE, et al. Arthroscopic meniscal repair using an exogenous fibrin clot. Clin Orthop Relat Res. 1990;252:64-72.
- Ahn JH, et al. Arthroscopic repair of horizontal meniscal cleavage tears of the lateral discoid meniscus. Arthroscopy. 2008;24(9):1016-1021.
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- Simon V, et al. Discoid lateral meniscus instability in children: part 1 - clinical grading system. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2023;31(11):4809-4815.
- Ahn JH, et al. Discoid lateral meniscus tears: a new classification based on MRI. Am J Sports Med. 2009;37(8):1595-1601.
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