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3行でわかる骨粗鬆症
  • 骨密度が低下し骨の内部構造が変化することで転倒などをきっかけに骨折しやすくなる疾患で、閉経後の女性に多い。福井県では約7万7千人、福井市では約2万7千人(令和4年)と推計される
  • DEXA検査と骨代謝マーカーで骨の状態を正確に評価し、薬・食事・運動で治療する
  • 大腿骨近位部骨折は骨折後1年以内の死亡率が約20〜25%に達するため、早期診断・治療が重要
詳しくは下記をご覧ください

① 骨粗鬆症とは

骨粗鬆症は、骨の量(骨密度)が低下し、骨の内部構造が変化することで、わずかな外力でも骨折しやすくなる疾患です。自覚症状がないまま進行し、転倒などをきっかけに骨折して初めて気づかれることが多いです。

日本における骨粗鬆症の患者数は推計1,280万人とされており、50歳以上の女性の約3人に1人が骨粗鬆症に該当するといわれています。[1]この有病率(50歳以上女性の1/3、50歳以上男性の1/8)を福井県・福井市の人口統計(令和4年)に当てはめると、福井県では約7万7千人、福井市では約2万7千人が骨粗鬆症に該当すると推計されます。[2]

骨折が起きやすい部位は脊椎(背骨)・大腿骨近位部(股関節周囲)・橈骨遠位端(手首)・上腕骨近位部の4か所が代表的ですが、近年では骨盤の骨折を見ることもあります。なかでも大腿骨近位部骨折は、骨折後1年以内の死亡率が約20〜25%に達するとされており、[3]早期手術・早期離床によりこれを改善する試みがなされています。

骨粗鬆症は自覚症状がありません。症状がないからといって放置すると、ある日突然の骨折につながります。定期的な骨密度測定が重要です。

② 骨密度が低下する原因

骨は常に古い骨が壊される(骨吸収)・新しい骨が作られる(骨形成)というサイクルを繰り返しています。このバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回ると骨密度が低下します。

閉経による骨密度低下

女性ホルモンには骨吸収を防ぐ働きがあります。閉経後に急激に低下すると骨吸収が進むため、骨密度が年間1〜3%程度低下します。[4]閉経後5〜10年間の骨密度低下が特に著しいため、この時期に適切な対策を取ることが重要です。

妊娠・授乳によるカルシウム不足

胎児の骨や母乳に必要なカルシウムは母親から供給されます。妊娠・授乳中は体内のカルシウムが低下しやすいため、複数回の出産・長期授乳は骨密度低下のリスクになります。[5]

その他のリスク因子

  • 喫煙
  • 過剰なアルコール摂取
  • 家族歴
  • カルシウム・ビタミンD摂取不足
  • ステロイド薬の長期使用
  • 甲状腺機能亢進症・副甲状腺機能亢進症など

③ 転倒と骨折

骨密度が低下していると、通常では問題にならないことでも骨折が生じることがあります。椅子に座る際に腰椎の圧迫骨折を起こしたり、転倒して股関節の骨折を起こしたりします。

股関節の骨折(大腿骨近位部骨折)はほとんどの方で手術・入院が必要になります。骨折後に元の生活に戻れる方は約半数といわれています。[3]そのため、可能な限りの転倒予防が必要です。

⚠️ 転倒リスクを高める因子:筋力・バランス能力の低下、視力低下・白内障、複数薬剤服用、段差・滑りやすい床。転倒予防にはリハビリによる筋力の維持や自宅内のバリアフリー化が重要です。

詳しくは転倒による骨折のページもご覧ください。

④ 診断:DEXA検査と骨代謝マーカー

DEXA法(骨密度測定)

骨密度の標準的な測定法です。骨密度検査は様々な部位での測定方法がありますが、当院では信頼度の高い腰椎と大腿骨近位部で測定を行っています。放射線被曝量は胸部X線撮影の約1/10程度と少なく、安全に繰り返し検査できます。[6]

測定値は若年成人平均値(YAM)との比較で表されます。

YAM比較 診断 対応
80%以上 正常 定期的な測定・生活習慣の維持
70〜80%未満 骨量減少 食事・運動・薬物療法を組み合わせて行います
70%未満 骨粗鬆症 治療が必須になります

骨代謝マーカー

骨密度検査に加えて、血液・尿検査で骨の代謝状態を評価します。当院では血液で評価しています。

骨形成マーカー:P1NP、骨型ALP、オステオカルシンなどがあります。
骨吸収マーカー:TRACP-5b、尿中NTXなどがあります。

当院では来院当日に骨密度検査(DEXA検査)を行い、後日、骨代謝マーカーの結果と合わせて治療方針をご説明します。当院ではMRIで脊椎圧迫骨折の有無も確認できます。

⑤ 薬物療法

骨粗鬆症の治療は「骨吸収を抑える」「骨形成を促す」「カルシウムの吸収を助ける」の3方向から行います。患者さんの骨密度・骨代謝マーカー・生活状況に応じて薬剤を選択します。

1

ビスホスホネート製剤(内服・静脈注射)

骨吸収を抑制する薬です。当院では月1回イバンドロン酸を静脈注射しています。注射が嫌な場合は内服もあります。

2

活性型ビタミンD₃製剤(内服)

エルデカルシトールは、カルシウムを吸収して、骨形成を助けます。ビスホスホネートとの併用で相加的な効果が期待できます。腎機能が悪い方は定期的な血清カルシウム値のモニタリングが必要です。

3

抗スクレロスチン抗体製剤(皮下注射)

スクレロスチンというタンパク質を標的とした注射薬で、骨形成を促進しながら骨吸収も抑制するという二重の作用を持ちます。月1回の皮下注射を12か月間行います。骨密度の改善効果が非常に高く、骨折リスクが特に高い方や、ビスホスホネートで効果が不十分な方に特に有用です。[7]12か月の投与期間終了後はビスホスホネートなど他の薬剤に切り替えて治療を継続します。

4

PTH(副甲状腺ホルモン)製剤(皮下注射)

テリパラチド(テリボン®)は、副甲状腺ホルモンの働きを利用して骨形成を直接促進する注射薬です。週1回または週2回の皮下注射で投与します。骨密度の改善効果が高く、特に重症骨粗鬆症や既存骨折がある方に有用です。[8]投与期間は最長24か月で、終了後は他の薬剤に切り替えて治療を継続します。

⚠️ ビスホスホネートの長期使用では、顎骨壊死(抜歯後など)のリスクがあります。治療開始前に虫歯の治療を済ませておくことを推奨します。また抗スクレロスチン抗体製剤は心筋梗塞・脳卒中の既往がある方には使用できません。いずれも治療開始前にご相談ください。

⑥ 食事・運動・日光浴

食事療法

サプリメントより食事からの摂取が吸収効率の面で優れています。

カルシウム(推奨摂取量:700〜800mg/日)
乳製品(牛乳1杯で約200mg)・小魚・豆腐・小松菜などから積極的に摂取します。

ビタミンD(推奨摂取量:400〜800IU/日)
鮭・サンマ・いわし・しらすなど脂の多い魚やきのこ類に多く含まれます。

たんぱく質
骨のコラーゲンの原料となります。肉・魚・卵・大豆製品をバランスよく摂取することで骨質の維持に役立ちます。

一方、過剰な塩分・カフェイン・アルコールはカルシウム排泄を促進するため控えめにしましょう。
喫煙はエストロゲン低下を促し骨密度低下につながるため禁煙が推奨されます。

運動療法

ウォーキング・スクワット・太極拳などは骨への機械的刺激となり、骨形成を促します。また筋力・バランス能力の向上により転倒予防にもなります。週3〜5回、1回30分程度を目安に続けることが勧められます。

過度な衝撃を伴う運動(ジャンプ・重量挙げ)は避け、水中歩行や椅子を使った体操など安全に行える運動から始めることが勧められています。

日光浴

皮膚が紫外線を受けるとビタミンD₃が体内でつくられます。日本では紫外線に気をつけながら1日15〜30分程度の日光浴が推奨されています。

⑦ 非定型骨折・骨軟化症・放射線照射後骨折

非定型大腿骨骨折

ビスホスホネートを長期使用している場合、大腿骨骨幹部に生じる「非定型骨折」のリスクがあることが知られています。[9]転倒などの明らかな外力なしに、太ももの痛みが出てきてさらに放置すると骨折します。長期使用中は定期的な大腿部の痛みなどの評価が必要です。使用年数や骨折リスクを考慮しながら休薬したり、薬剤の変更を行うこともあります。

B型肝炎治療による骨軟化症

核酸アナログ製剤(一部のB型肝炎治療薬)の長期使用により、近位尿細管障害(ファンコニー症候群)を介したリン喪失が生じ、骨軟化症を来すことがあります。[10]骨軟化症は骨粗鬆症とは異なり「骨の石灰化障害」であり、骨密度低下・骨痛・筋力低下・低リン血症などが特徴です。肝炎治療中に骨や筋肉の症状が出た場合は整形外科への相談をお勧めします。

放射線照射後骨折

放射線治療を行った部位の骨は血管新生が障害され、骨の修復能力が低下します(放射線骨壊死・放射線後骨脆弱化)。照射後数か月〜数年を経て骨折が生じることがあり、特に骨盤・肋骨・脊椎に多くみられます。[11]がん治療後の骨の痛みや骨折には、放射線照射との関連を念頭に置いた評価が必要です。

⑧ 当院での対応

当院での対応

  • 来院当日のDEXA検査(骨密度測定)が可能
  • 血液検査による骨代謝マーカーの評価
  • 院内オープン型AI搭載MRIで脊椎圧迫骨折の有無を確認可能
  • 患者さんの状態に応じた薬剤選択(内服・注射)
  • 転倒予防指導・生活習慣(食事・運動・日光浴)のアドバイス
  • 予約不要・当日受診可

骨粗鬆症は「痛みがないから大丈夫」ではなく、骨折してから気づく疾患です。閉経後・骨折の家族歴がある・最近身長が低くなったと感じる方は、ぜひ一度骨密度検査を受けることをお勧めします。

監修 院長 大橋義徳(整形外科専門医・医学博士・日本スポーツ協会公認スポーツドクター)

参考文献

  1. 日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版. ライフサイエンス出版; 2015.
  2. 福井県統計課. 福井県推計人口(令和4年). 福井県ホームページ. https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/toukei-jouhou/zinnkou/jinkou.html
  3. Orimo H, Yaegashi Y, Onoda T, et al. Hip fracture incidence in Japan: estimates of new patients in 2007 and 20-year trends. Arch Osteoporos. 2009;4:71-77. PubMed
  4. Eastell R, O'Neill TW, Hofbauer LC, et al. Postmenopausal osteoporosis. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16069. PubMed
  5. Kovacs CS. Calcium and bone metabolism disorders during pregnancy and lactation. Endocrinol Metab Clin North Am. 2011;40:795-826. PubMed
  6. Blake GM, Fogelman I. The role of DXA bone density scans in the diagnosis and treatment of osteoporosis. Postgrad Med J. 2007;83:509-517. PubMed
  7. Saag KG, Petersen J, Brandi ML, et al. Romosozumab or Alendronate for Fracture Prevention in Women with Osteoporosis. N Engl J Med. 2017;377:1417-1427. PubMed
  8. Neer RM, Arnaud CD, Zanchetta JR, et al. Effect of parathyroid hormone (1-34) on fractures and bone mineral density in postmenopausal women with osteoporosis. N Engl J Med. 2001;344:1434-1441. PubMed
  9. Shane E, Burr D, Abrahamsen B, et al. Atypical subtrochanteric and diaphyseal femoral fractures: second report of a task force of the American Society for Bone and Mineral Research. J Bone Miner Res. 2014;29:1-23. PubMed
  10. Jao J, Wyatt CM. Antiretroviral medications: adverse effects on the kidney. Adv Chronic Kidney Dis. 2010;17:72-82. PubMed
  11. Saito T, Kobayashi M, Nishida H, et al. Radiation-induced fractures of the ribs: incidence and risk factors. J Radiat Res. 2021;62:451-458. PubMed

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